特定秘密保護法について(2)「基本的人権の尊重」との関係で

先のブログでは、「特定秘密保護法」は「日本国憲法の基本原理でもある「国民主権」「基本的人権の尊重」に反します」と書きました。

 

前回のブログでは「国民主権」との関係を紹介したので、ここでは基本的人権との関係を実際の事件との関係で紹介します。

 

アメリカでは9.11テロ事件以降、「愛国者法」の下で行われた国民の携帯電話の盗聴、メールの秘密閲覧などが人権侵害だとして問題になりました。

 

いま、やはりアメリカがドイツのメルケル首相の携帯電話の通話を盗聴したことも問題となっています。

 

「特定秘密保護法」が成立すれば、警察などが個人の携帯電話の盗聴、メールの秘密閲覧などを行ない、そして「特定秘密」に指定される可能性が出ます。

 

こうして警察や自衛隊などによって市民が監視される可能性が出ます。

 

現実にも、1985年から86年にかけて、共産党幹部の電話を公安警察が盗聴していました。

 

また、2002年には防衛庁が「情報公開請求」をした市民のリストを作成したり、2007年には陸上自衛隊の情報保全隊が市民、国会議員を調査・監視していたことが発覚しました。

 

田母神俊雄氏によれば「防衛庁や防衛施設庁の情報を公開せよと請求してきた者があったら、その者は、警戒の要ありとして個人情報をリスト化することが行われていました」が、彼は「〔リストを〕作っていないのは怠慢だ」と怒鳴りつけたそうです(田母神俊雄『座して平和は守れず』(幻冬舎、2009年)6768頁)。

 

航空自衛隊のトップだった人物が、市民を「警戒の要あり」として「個人情報をリスト化」しろと命じる組織が自衛隊なのです。

 

情報保全隊による国民監視活動が発覚したのは第1次安倍内閣の時代ですが、このとき安倍内閣は情報保全隊の国民監視活動を擁護しました。

 

久間防衛大臣は「調査される、情報収集されるのが嫌だというところに私はむしろ不自然さを感じる」(2007619日参議院防衛委員会での発言)とまで言っていました。

 

 警察や自衛隊が市民をこうして監視する事態は現在でも存在します。

 

「愛してるよ~」などという、家族や恋人の携帯電話でのたわいもない会話すらも警察や自衛隊などが盗聴し、盗聴の事実を「特定有害活動の防止に関する事項」「テロリズムの防止に関する事項」などの名目で「特定秘密」に指定できる「特定秘密保護法」。

 

まさに「プライバシーの権利」(憲法13条)の侵害を認める法律ですが、こんな法律をどう思いますか?

 

 また、自衛隊員やアメリカ兵などに軍のことを聞いたり、たまたま写真を撮った際に基地や軍艦が写っていたら、軍に関する情報を得ようとしたなどとして刑事罰が科される可能性があります。

 

 実際にも、米艦船がいつ戻ってくるかを乗組員に聞き出そうとしたクリーニング屋さんが「艦船入港の日時に関する情報の提供を受けようと企てた」(判決文)として、195510月に横浜地検で起訴され、19572月に懲役8月執行猶予2年の判決を受けました。

 

 クリーニング屋さんは単に商売の関係で米軍艦の入港日時を聞き出そうとしただけなのに、刑事罰が下されたのです。

 

 単なるたわいのない話であっても、それが軍にかかわることであれば「特定秘密を聞き出そうとした」などとして刑事罰に課せられる可能性があるのです。

 

 

 こんな「特定秘密保護法」をどう思うでしょうか?

 

(飯島滋明)

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