2013年11月4日、『職業は武装解除』(朝日新聞出版、2012年)などの著者である瀬谷ルミ子さんの講演会が名古屋学院大学で開かれました。
国際協力のあり方、平和構築、信頼醸成などについての極めて有益な講演会でした。
たとえば、「援助依存体質」に陥ることなく「自立」を促す国際協力を実践していると、瀬谷さんは実際の体験に即しながら話をされていました(瀬谷さんの上記本では135頁)。
その他のいろいろな問題については瀬谷さんの著書をご覧いただくとして、ここでは私が特に気になったことを紹介させていただきます。
たとえばケニアでの暴動の話。
2007年12月、1000人以上が亡くなり、30万人以上が家を失って難民になるなどの暴動が起きました。
「アフリカの優等生」と言われたケニアでこうした暴動が起こった原因として、瀬谷さんは「教育」を挙げていました。
自分たちの民族が貧困に陥った原因を、他民族のせいにする議論がなされたそうです。
教育を受けておらず、「読み書き」ができない人々は、そうした主張を鵜呑みにしました。
そして、自分たちが貧困に陥ったのは他民族のせいだと信じ、暴動が起こったそうです。
人々が教育を受け、新聞などでいろいろな情報が得られれば、貧困に陥った原因が他民族のせいではないことが確かめられたのではないかと瀬谷さんは述べていました。
自分たちの経済状況が悪くなった原因を他民族のせいにすることで「排外主義」的傾向が生まれ、悲惨な事件が起こった歴史は数多くあります。
1929年に始まる世界大恐慌で、ドイツでは約600万人もの失業者が生まれました。
その原因をヒトラー党首のナチスなどは「ユダヤ人」のせいだと宣伝しました。
そうした人種差別的な主張が蔓延したことで、ドイツでも「ユダヤ人」への迫害が生じました。
残念なことに、日本でもこうした傾向があります。
小泉内閣、第一次安倍内閣の下で進められた「規制緩和」「構造改革」。
「労働法制」の規制緩和により、企業は正社員だけではなく、「非正規社員」を採用することが可能になりました。
たとえば2003年の「労働者派遣法」の改正により、製造業でも正規社員でなく、派遣社員を採用することが可能になりました。
労働法分野でのこうした「規制緩和」で非正規社員は増加し、「格差社会」が到来しています。
そこで経済的に悲惨な状況に置かれた人々が一部の軽薄な政治家やコメンテーターに煽られて排外主義に走り、在日コリアンや中国人、韓国人への敵愾心が植えつけられていきています。
こうした排外主義がいかに平和構築を阻むものか、ナチス・ドイツでの「ホロコースト」やケニアの事例が紹介しているように思えます。
また、平和構築にとっていかに「教育」が大切かも、瀬谷さんの講演からも学ぶことができたと思います。
ドイツでも、排外主義的な差別をなくすための教育が徹底されています。
瀬谷さんの講演や、ナチスの人種差別の歴史から、私たちは何を学ぶべきでしょうか?
(飯島滋明)
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